やっと、結果が出た。彼女を長い間取材してきた私の正直な感想だ。そして、我が身のことのように嬉しい。

 華音有は跳べる、踊れる、演じられる、回れる、性格はマスコミから好まれないと思うが、人を惹き付ける美貌を兼ね備えてる。
 日本を、そして世界を圧巻させる力を持っていると信じていた。

 どんなに結果が出なくても、才能を疑ったことはなかった。

 はあ、なんだろう、この気持ち。

 涙が出てきた。

 まだ明日がある。明日が一番の山場。今日のショートプログラムは二分五十秒以内だが、フリースケーティングは四分プラスマイナス十秒以内と長い。入れられる要素がショートプログラムに比べ圧倒的に多い。
 それに、プログラムの中にトリプルアクセル一回に加え、四回転トウループを一回跳ぶ予定である。

 だから、泣くのは早いと必死にこらえる。でも、こらえきれない。

 涙によって視界がぼやけ、他の選手の演技や華音有の演技が見えない。

「実城さん大丈夫?」

 華音有がティッシュを箱ごと差し出してくれた。

「ありがとう、ごめんね。」

 私は遠慮なく使わしていただいた。