「でも……ありえなくはない、気がする」

「え?」


藍君の肯定的な言葉に、私は瞬きしながら彼を見つめると、その視線がようやく私を捉えた。


「うちの親、結構年行ってんだ。両親が結婚して10年以上経ってから俺が生まれてるから」


そう、か。

高杉さんの彼女さんが消えたとされる頃と年齢を照らし合わせて計算すると、確かに繋がる気がする。


「高杉さんの彼女さんが……藍君の、お姉さん?」


疑問をそのまま口にすると、藍君は苦い笑みを漏らした。


「だとしたら薄情だよな。家族全員しっかり忘れてるなんてさ。高杉さんは、しばらくは覚えてたみたいなのに」


言いながら、まるで自分を責めるように薄く笑う藍君に、私は首を横に振って否定する。


「藍君は忘れてないよ。学校で姿を二度も見たし、夢でも見てる。それはきっと忘れてないからだよ。だから、ちっとも薄情なんかじゃないよ」


慰めでもなく、ただ、私が感じているありのままを伝えると。