~睡蓮〜
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お祭りでトシ兄と別れてしまった。そのことにたいして涙が流れてくる。
出来ることなら早く逃げ出してトシ兄の所へ帰りたい。だが、今は脇腹を抱えられていて身動きが取れない。唯一動かせる首を動かして自分を抱えられている人を見上げる。
「誰。。。なの?ヒック」
睡蓮はしゃくり上げる声を押し殺して金色の髪に赤い目の男に話しかけた。
「ん。。。俺の名前か?。。。」
「うん。。。」
「鬼道 刹那だ。」
「きどう。。。せつな。。。」
「お前の。。。実の。。。いや、いい。また今度話すとしよう。」
「う、うん」
「おい、睡蓮、睡蓮起きろ着いたぞ」
「着いたってどこによーむにゃむにゃトシにぃっじゃなかった。。。えと、刹那?さん?ここは。。。どこです?」
「じゃあ簡単な説明をする。。。」
どうやらここは島原と言う所らしく自分は京都にいるらしい。本当は女性が男性に、おもてなしするところだか自分には看板娘や配膳、掃除をやれとのことだった。
「嫌ですよ!!家にはいつ帰れるのー??」
「家には帰れないと考えた方がいいな。。。」
「え。。。」
睡蓮はペタリと座り込んだ。
この時悲しみや寂しさか5歳の少女の心を貫いた。
ーすまない、睡蓮。。。ー
刹那は力なく座り込んだ睡蓮の背中をさすりながら思っていた。
睡蓮はいつの間にか寝ていて外では眩しい朝日と鳥の声が響いていた。
「ム、なんかあったかい。。。」
「ん。。。起きたか。。。」
目を開けた先にはトシ兄とよく似た匂いと膝があった
しかしそれは違ったみたいだった。。。
「刹那さん!すっすみません!」
「いや、いいんだ。それより支度をしてこいそしたら朝餉だ。」
「は、はい。。。」
「それとそんなに堅苦しくしないでくれ。。。俺がかなしい。急にとは言わない徐々に…慣れてくれ。少なからず俺はお前の味方だ」
「はい。。。じゃなくてわかった。」
「それでっ…いいんだ。。。」
刹那さんの行った言葉はどこかさみしそうだったが、味方と言われてもそんなに急に信じられるはずもなく、睡蓮は様子を見ることにした。
朝餉を食べ終え食器を流しで洗っているとき刹那さんに呼ばれた。
「おい、睡蓮ちょっとついてきてくれ」
「う、うん。。。」
静かな廊下に二人の足音が響く。。。
しばらく歩くと刹那さんはとある部屋の前で足を止めた。
「失礼する。。。」
「。。。入れ」
妖艶で、嗄れた声が聞こえてきた。
開いた障子の中からは1人のキセルを吹かしながらニヤリと笑う女がいた。
その女からは妖気がドロドロと漂っていて今にも胸が苦しくなってきそうだ。
「クックック 鬼道 豊艶じゃ。。。はじめましてとでもいうべきであろうかえ? 睡蓮よ」
「はじめまして。。。豊艶様。。。私土方「ちょいと待ちな。。。お前はもう土方 睡蓮ではない。鬼道 睡蓮じゃ それと、ここでは蓮華と名乗りたまえ」
「はい。。。」
睡蓮はなぜ親族でない者の苗字をなのらなければならないのかわからなかったが、早く胸苦しさから開放されたくて頷いた。
それから睡蓮は豊艷の部屋を出て島原でやらなくてはならない自分の仕事を刹那から教わっていった。
まずはたくさんの布団やら下着やらを洗い、干す。そしたら部屋を全て箒で掃き汚れがあれば拭く。廊下を雑巾がけしたら昼餉を食べ昼寝。昼寝から覚めたら刹那と共に風呂へ行った。そして睡蓮のその日の仕事は終わるのだ。睡蓮はまだ7歳だが、それらを少しの疲れを見せることもなく淡々と終わらせていった。
なぜだか寝るときは刹那に耳を塞がれる。
理由はこの時はわからなかったがわかるまではそう遠くない未来だった。