君がいてくれたこと




服が好きなこともあるけど、なにより、「期待」してたから。



昔..中学1年の時の事。


雅と2人で、一緒に働きたいね、って。
ずっと一緒だよ。って。


働くなら、絶対ファッション関係がいい。


って、私が言ったら、雅は、

じゃあ、このファッションビルで働こう。って。



都内で一番オシャレなビル。

一番オシャレな2人組になって、

みんなを後悔させてやる、って。







そんなこと、本当になるわけないけど。


私だけでも、実現させたいんだ。



雅が今、私を憎んでるかもしれないけど。

私だけでも、

心の中だけでもいい。



雅を今からでも、大切にしたい。




「ちょ、優奈!?何泣いてんの!!」


「うわーん。理沙ー。」



理沙の前で、雅のことで泣くなんて。



どれだけ、自分勝手なのかな。

自分から雅を手放して。

傷つけて。




でも、もう後戻りできないのなら、


これからを、大事にしようかな。




初出勤当日



「いやーッ寝坊したぁぁ!」


7時には、行かなきゃいけないのに、



現在時刻 6時半。


30分で、準備しろというのか?

ま、それは自己責任だし...。


「急ごうッ!」




30分の間で、

着替えて、メイクもすました。

「やべっ、時間!!」



初出勤。楽しみ。


不安だけど、頑張ろう。





この時は、期待しかなかった。



これから始まる、新たな日々。



その先におこる、幸せに隠された闇なんて


このころは、知る由もなかった。





「今日から、お世話になります。桐谷優奈です。」


ミーティングも終わって、基本的な事も、先輩スタッフに習って


あとは、オープン待つのみ!


緊張するー!



オープンは、9時から。


現在時刻、8時45分。

後15分かー。



「遅れましたっ!」

急に、店内に響いた声。




「あ、遅いよー。雅ちゃん!」



ドクンッ



聞き覚えのある名前が


一瞬、怖かった。




ゆっくり後ろを振り返る。



でも、そこにいたのは、あの『雅』じゃなかった。



「あ、新人ちゃん?かわいー!あ、私、横山雅!」

とても、かわいい声。


暗めの茶髪で、メイクも清楚系。

目もぱっちりしていて、美人。



高鳴っていた胸が、落ち着く。