君がいてくれたこと




「えっ...」


驚く私を置いて、


「一生幸せにする。もう俺は、彼氏じゃなくて、お父さんだよ。一緒に、幸せ...作ろう?」



和也は真剣な眼差しで、私を見つめる。



「和也っ...」



いつの間にか私の目からは、涙が出てきた。




一粒、一粒。



それを超えたら、ぼろぼろと。



「いいに、決まってるっ...」



言葉を切らしながらもそう答えていく。







「泣くなよ...」



そう言って、私の左薬指に、指輪をそっとはめる。



「今日仕事休んで、買いに行ったんだからな。」


「うん、うんっ...」



涙が止まらない私に、和也の顔が近づく。



「んっ...」



優しい口付け。



「和也ぁっ...」

「愛してる。優奈。」



二度目のキスは激しくて。



「ん...んっ」



車の中で漏れる声。


和也の舌が、優しく私の舌をからめる。



「ああっ...んっ...」

「優奈、いやらしいからやめろよ、もっとしたくなる。」



その言葉に赤面する間に、また和也の唇が私の唇をふさぐ。



そうして、一日が終わった。




あれから一ヵ月後。



私たちは式を挙げた。




ちょっとお腹は大きくなったし、つわりもあったけど、



幸せには負けた。



新婚旅行は、家族旅行に変えよう。



そうなった。




そしてこれから私の、



第二の人生の始まり。




「う、わー!きれー!」

「そりゃ、新しいからね」




私たちは、新しい家の前で立ちすくんでいた。



もっと言えば、



『私たちの家』







結婚式を挙げる前に、私たちは家を探していた。



そしてやっと見つけた、私たちの家。




「やばい、超興奮してきた!」

「俺も!」



何十年のローンを組んで、手に入れた私たちの帰る場所。




後7カ月で生まれる私たちの子。




いろんなものが、私を埋めていく。




なくなりかけてたものが、再び埋まっていくようで。




とてつもなく、幸せだった。






「今日から、俺たちの家。」



和也がぼそっと呟く。



「そうだね。」



それに返す。




二人とも、うれしさが、表情ににじみ出て...




はにかみながら、和也は私にキスをくれた。







*****


「ふー、ひと段落!」



荷物を片づけていた私たちは、ちょっと休憩をとることにした。



「はい、コーヒー、ホット。」



「3月の終わりにホット?」



「いいじゃん!」



なんていう、たわいもない会話。



「明日からは、ほんとに家事なんだー。」


「頑張れよ。火には気をつけろよ!家燃やすなよ!」


冗談目かして、和也が言う。


「分かってるって!そこまで馬鹿じゃないよ!」



私も笑って返す。



いいな、この感じ。





せっかく復帰した仕事も、ちょっと前にやめた。



さすがに大きなお腹で接客はできない。



それに、家族のために、家事もしたい。




「よし、明日から早起き!」

「俺は寝てるから」

「ちょっとー。」


「愛妻弁当期待してるから。」


「どうしよっかなー。」




これこそ、馬鹿夫婦!?



ああ、親馬鹿になりそうな予感...









****


ピピピピピ..


「ううー...」



目覚ましを止め、時計を見る。


まだ朝の5時。



「ねむい。」




けど、朝ご飯とお弁当も作らないと!



そう言い聞かせて、新しいふかふかのベッドから出た。



隣には、和也の寝顔があった。



「頑張るからね」



そう言って、まだ寝ている和也のおでこにキスをして、



台所へ向かった。



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