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「おいしかったねー。」
「うん、はらいっぱい。」
レストランを出て、私たちは車に乗り込んだ。
和也は車だから、送ってもらうことにした。
。
車に乗って、しばらくすると、急に車が道の端に行って、止まった。
「えっ!?ど、どうしたの、和也。」
驚いた私とは逆に、和也は真剣な顔をしてこっちを見る。
「な、何...?」
「ん...あの、さ...」
そう言って、和也の手が動く。
そうして、一つの小さな箱のようなものを取り出した。
それと同時に、箱のふたを開け、
「俺と結婚してください、優奈。」
はこの中には、小さなダイヤが輝く、指輪が入っていた。
。
「えっ...」
驚く私を置いて、
「一生幸せにする。もう俺は、彼氏じゃなくて、お父さんだよ。一緒に、幸せ...作ろう?」
和也は真剣な眼差しで、私を見つめる。
「和也っ...」
いつの間にか私の目からは、涙が出てきた。
一粒、一粒。
それを超えたら、ぼろぼろと。
「いいに、決まってるっ...」
言葉を切らしながらもそう答えていく。
。
「泣くなよ...」
そう言って、私の左薬指に、指輪をそっとはめる。
「今日仕事休んで、買いに行ったんだからな。」
「うん、うんっ...」
涙が止まらない私に、和也の顔が近づく。
「んっ...」
優しい口付け。
「和也ぁっ...」
「愛してる。優奈。」
二度目のキスは激しくて。
「ん...んっ」
車の中で漏れる声。
和也の舌が、優しく私の舌をからめる。
「ああっ...んっ...」
「優奈、いやらしいからやめろよ、もっとしたくなる。」
その言葉に赤面する間に、また和也の唇が私の唇をふさぐ。
そうして、一日が終わった。
。
あれから一ヵ月後。
私たちは式を挙げた。
ちょっとお腹は大きくなったし、つわりもあったけど、
幸せには負けた。
新婚旅行は、家族旅行に変えよう。
そうなった。
そしてこれから私の、
第二の人生の始まり。
。
「う、わー!きれー!」
「そりゃ、新しいからね」
私たちは、新しい家の前で立ちすくんでいた。
もっと言えば、
『私たちの家』
。
結婚式を挙げる前に、私たちは家を探していた。
そしてやっと見つけた、私たちの家。
「やばい、超興奮してきた!」
「俺も!」
何十年のローンを組んで、手に入れた私たちの帰る場所。
後7カ月で生まれる私たちの子。
いろんなものが、私を埋めていく。
なくなりかけてたものが、再び埋まっていくようで。
とてつもなく、幸せだった。
。
「今日から、俺たちの家。」
和也がぼそっと呟く。
「そうだね。」
それに返す。
二人とも、うれしさが、表情ににじみ出て...
はにかみながら、和也は私にキスをくれた。
。
*****
「ふー、ひと段落!」
荷物を片づけていた私たちは、ちょっと休憩をとることにした。
「はい、コーヒー、ホット。」
「3月の終わりにホット?」
「いいじゃん!」
なんていう、たわいもない会話。
「明日からは、ほんとに家事なんだー。」
「頑張れよ。火には気をつけろよ!家燃やすなよ!」
冗談目かして、和也が言う。
「分かってるって!そこまで馬鹿じゃないよ!」
私も笑って返す。
いいな、この感じ。
。