君がいてくれたこと




****


「おいしかったねー。」

「うん、はらいっぱい。」




レストランを出て、私たちは車に乗り込んだ。



和也は車だから、送ってもらうことにした。






車に乗って、しばらくすると、急に車が道の端に行って、止まった。


「えっ!?ど、どうしたの、和也。」


驚いた私とは逆に、和也は真剣な顔をしてこっちを見る。



「な、何...?」

「ん...あの、さ...」




そう言って、和也の手が動く。



そうして、一つの小さな箱のようなものを取り出した。


それと同時に、箱のふたを開け、


「俺と結婚してください、優奈。」




はこの中には、小さなダイヤが輝く、指輪が入っていた。





「えっ...」


驚く私を置いて、


「一生幸せにする。もう俺は、彼氏じゃなくて、お父さんだよ。一緒に、幸せ...作ろう?」



和也は真剣な眼差しで、私を見つめる。



「和也っ...」



いつの間にか私の目からは、涙が出てきた。




一粒、一粒。



それを超えたら、ぼろぼろと。



「いいに、決まってるっ...」



言葉を切らしながらもそう答えていく。







「泣くなよ...」



そう言って、私の左薬指に、指輪をそっとはめる。



「今日仕事休んで、買いに行ったんだからな。」


「うん、うんっ...」



涙が止まらない私に、和也の顔が近づく。



「んっ...」



優しい口付け。



「和也ぁっ...」

「愛してる。優奈。」



二度目のキスは激しくて。



「ん...んっ」



車の中で漏れる声。


和也の舌が、優しく私の舌をからめる。



「ああっ...んっ...」

「優奈、いやらしいからやめろよ、もっとしたくなる。」



その言葉に赤面する間に、また和也の唇が私の唇をふさぐ。



そうして、一日が終わった。




あれから一ヵ月後。



私たちは式を挙げた。




ちょっとお腹は大きくなったし、つわりもあったけど、



幸せには負けた。



新婚旅行は、家族旅行に変えよう。



そうなった。




そしてこれから私の、



第二の人生の始まり。




「う、わー!きれー!」

「そりゃ、新しいからね」




私たちは、新しい家の前で立ちすくんでいた。



もっと言えば、



『私たちの家』







結婚式を挙げる前に、私たちは家を探していた。



そしてやっと見つけた、私たちの家。




「やばい、超興奮してきた!」

「俺も!」



何十年のローンを組んで、手に入れた私たちの帰る場所。




後7カ月で生まれる私たちの子。




いろんなものが、私を埋めていく。




なくなりかけてたものが、再び埋まっていくようで。




とてつもなく、幸せだった。






「今日から、俺たちの家。」



和也がぼそっと呟く。



「そうだね。」



それに返す。




二人とも、うれしさが、表情ににじみ出て...




はにかみながら、和也は私にキスをくれた。







*****


「ふー、ひと段落!」



荷物を片づけていた私たちは、ちょっと休憩をとることにした。



「はい、コーヒー、ホット。」



「3月の終わりにホット?」



「いいじゃん!」



なんていう、たわいもない会話。



「明日からは、ほんとに家事なんだー。」


「頑張れよ。火には気をつけろよ!家燃やすなよ!」


冗談目かして、和也が言う。


「分かってるって!そこまで馬鹿じゃないよ!」



私も笑って返す。



いいな、この感じ。