「雅、迷惑なんだけど。」
気付けば、私はそう呟いていた。
自分でも知らないうちに、
過去を拒絶するのが嫌で
その原因の雅を、拒絶していた。
「優奈...?」
まるで、知らない人を見るかのような表情で、
雅はそう聞いた。
。
けれど、数秒もしないうちに雅は
「ごめんね。」
その言葉を残して、立ち去った。
その雅の顔が、忘れられなくて...。
涙を目いっぱいにためていて...。
私が見た雅の顔は、
それが、最後だった。
。
この時から私は、人を信用なんて馬鹿な事
やめると決めた。
私はこれだけ雅の事が好きなのに
自分のほうがかわいかったんだ。
裏切れるんだ。
だから、人を信用なんて
もう、絶対にしない。
。
私が知ったのは、次の日だった。
雅が、自殺未遂をしたらしい。
手首を切ったけど
幸い、命に別状はなかったらしい。
そして、雅が転校することになった。
携帯番号も変えたみたいだし
行き先も分からなかった。
だから
私は不覚にも、安心してしまった。
雅が無事でよかった。
転校してくれて、よかった。
つながりが無くなって、よかった。
。
時は流れ、卒業の日。
「理沙ぁー...。」
「うわっ、ちょ、やめてって!キモいー!!」
「だってぇーグスッ..」
「もう、顔ひどいよー」
泣きながらも、どこか笑っている、私たち。
今も、あの事を忘れたわけじゃない。
けれど、おかげで私は、楽しい高校生活だった。
その楽しさは、雅の辛さと引き換えだったのにもかかわらず、
私は、楽しんでしまった。
。
「優奈は、働くんだよね?」
「うん..。」
少し、涙がおさまった。
「じゃあ、優奈が働いたら、ショップ、行ってあげるから!」
「ありがとー。理沙!」
私は、ファッションビルの、ショップで働くことにした。
。
服が好きなこともあるけど、なにより、「期待」してたから。
昔..中学1年の時の事。
雅と2人で、一緒に働きたいね、って。
ずっと一緒だよ。って。
働くなら、絶対ファッション関係がいい。
って、私が言ったら、雅は、
じゃあ、このファッションビルで働こう。って。
都内で一番オシャレなビル。
一番オシャレな2人組になって、
みんなを後悔させてやる、って。
。
そんなこと、本当になるわけないけど。
私だけでも、実現させたいんだ。
雅が今、私を憎んでるかもしれないけど。
私だけでも、
心の中だけでもいい。
雅を今からでも、大切にしたい。
。
「ちょ、優奈!?何泣いてんの!!」
「うわーん。理沙ー。」
理沙の前で、雅のことで泣くなんて。
どれだけ、自分勝手なのかな。
自分から雅を手放して。
傷つけて。
でも、もう後戻りできないのなら、
これからを、大事にしようかな。
。