君がいてくれたこと



「最初は俺、雅の言うとおりすればいいって。軽く考えてた。
 でも、一緒にいるたびに、本当に優奈に惹かれて行ったよ。でも、雅の陰には、暴力団とかいて...逆らえなかった。だから、雅にばれないように、優奈に会いに行ったんだ。本当の事伝えたくて..でも、雅が来て...」



「あっ...」



これで、亮太がこの前来たわけが分かった。



「ごめん、優奈...」






亮太が必死に弁明をする。



でも、それは何も響かない。





それよりも、雅はいったい何者なの?



暴力団?



意味が分からない。



知っていい真実なのか。




知るべきなのか。









「もういいよ。」



気づけば、亮太にそう答えていた。



「私、行かなきゃならないから。」



雅と、話がしたい。



そう立ち上がった瞬間、





「優奈、本当にひかれていった。これだけは、真実。」




涙が出そうになった。



そんなの分かってる。



亮太の瞳は、嘘つかないもん。



「あと、雅には気をつけて。レイプの件も、雅が黒幕だから。」






「えっ...」



あの光景がよみがえる。



あれも、雅..?



「本当に、危険だよ。だから、無理しないで。」



「分かっ...た。」




「ありがとう、優奈。」




それだけ聞いて、私はそこを後にした。



だって、これ以上いたら、だめだ。




もう、後戻りできなくなるよ...





家に帰ったのは、午後5時



冬だから、辺りも真っ暗。




私は部屋の電気もつけず、ただ、突っ立っていた。



その手には、雅への着信画面。



ずっと、このボタンを押すべきが悩んでる。




今日、会って話すべきか。





話し合ったほうがいいんだろうけど...



怖い。



真実が、本当に知るべきものなのか。



そもそも、本当に雅がやったのか。



何も、知りたくない。






「あれ...?」


待って。



雅がやってないんなら、怖がる必要も何もないじゃん。



何私、雅の事、疑ってんだろ。





うん。雅がやるはずないよ。



亮太の口から出まかせだよ、きっと。



そう信じて...





私は、着信ボタンを押した。





5コール、6コール...



7コール目で、雅は出た。


「あ、優奈~!今丁度休憩中で電話しようとしてたの!」

「あ、そっか...」

「今日、早めに上がれそうだからさ、8時くらいには行ける!どうする?優奈の家でもいい?」

「あ、ごめん!今ちょっと出てて...カフェとかでもいい?」


とっさにウソをついてしまった。



なんか家だと、逃げ場がないみたいで...


怖かった。



「うん、別にいけど...じゃあ、どこのカフェ?」

「じゃあ、○○駅の、いつも行ってたカフェあるじゃん!あそこで。」

「おけー。じゃね。」

「はーい。」




ドクン、ドクン


心臓が激しく波打ってる。



やっぱ、雅の事、疑ってる。


私がこんなこと、してはいけないのに...




でも、しょうがない。



今日が、真実を知れる日だと信じて。





私は準備を進めた。






午後7時50分、カフェについた。



店内にはもう、雅の姿があった。



「あ、優奈!」



雅が私に気付き、手招きをする。



私はその方へ向かう。






「雅...早かったね..」


「うん。ちょっと早く抜けてきちゃった。」



わたしは、キャラメルカプチーノを頼んで、席に着く。




「...優奈、やっぱ何かあったよね...?」



私のよそよそしい態度に、違和感を抱いたのか、そう聞いてくる。




「理沙から、きいたんだよね...?」

「うん...けど、私は優奈がそんなことしたと思ってない。」



雅がじっとわたしを見つめる。