理沙の事、まだ言ってなかったな。
今までは何もないような態度だったから、
理沙から昨日の夜にでも聞いたのかな。
そりゃ、そうか。
仕事も、休みすぎだよな。
ていうか、あんなに無断欠勤もあったのに。
雅のおかげだよ。
普通だったら、首だろうな。
雅には迷惑かけてばっかり...
ごめんなさい。
今日、決着付けられるかもしれないから。
待ってて。
。
さらに、私は支度を始めた。
いつもより気合を入れた強めのメイク。
服も、ちょっとシンプルに、かっこよく。
髪はストレートで下して。
高めのハイヒール。
....少しでも、弱い自分を見せたくなかったの。
勘ぐられないように。
姿だけでも、強く、強く。
。
約一時間後、私は亮太の住んでいるマンションの前に立っていた。
全身が、妙な違和感に襲われ、心臓が波打つ。
真実がつかめるかもしれないという
期待。
その真実への
恐怖。
その二つの入りじまった感情を持ちながら、
一歩一歩、部屋に近づく。
。
ピンポーン
エレベーターの音。
エレベーターに乗り込み、上へと上がっていく。
階が上がるにつれて、恐怖と不安も波打つ。
「そういえば、部屋にいるかも分かんないじゃん!」
独り言のように呟く私。
「来ていなかったらどうしよう..」
不安がどんどん募っていく。
でも、今更後悔しても遅い。
前を向こう。
。
______
___
「ふー。」
とうとう、部屋の前に来ちゃった。
深く深呼吸。
ん?深いから深呼吸なんだよね?
なんて、どうでもいいことを思っていないと、おかしくなっちゃいそう。
怖がるな。
ここまで来たんだもん。
真実を知る。
絶対に。
。
ピンポーン
気づけばインターホンを押していた。
それからが、とても長く感じた。
そして、インターホンから響く声。
『はい』
亮太だ。
「優奈、です。」
思わず敬語になってしまった。
ここで初めて、私は亮太とここまで距離ができていたことを実感した。
。
優奈と答えた瞬間、壁の向こうが一瞬声を失ったことが分かった。
それと同時に、ドアが開いた。
「亮太..」
「優奈...」
無言が続く中
「入って。」
そう亮太がいい、私は部屋へ入った。
。
「...で、どうして分かったの、ここ。」
「ちょっと、ね。」
亮太は勘ぐったのか、それ以上聞いてこなかった。
「で、話があるんだろ?」
亮太はまるで、私が何のためにここに来たのか知っているように、そう言った。
「うん。」
そこで、思わず声を失った。
理由なんかない。
なのに、怖いよ。
。
一回深呼吸をして、
「亮太がやったの..?」
そう聞いた。
これ以上言葉が出ない。
それを悟ったのか、亮太は私の目をじっと見て、
「うん。」
それだけ、言った。
。