君がいてくれたこと




雅は変わってしまった。


目立たず、無口。

人とのかかわりを恐れ、会話を交わすのは、私だけ。


だから私は、高1の時、雅と一緒にいた。




けれど、クラスが離れた、高2。



この、数年前と、同じような状況。



ここで、「うん。」と言えば、嘘になる。


雅の事は、大好きだ。


けれど、私は...。





もう、あんなことにはなりたくない。



だから、雅許して。



あなたを、裏切ります。





「うん。雅マジうざい!ずっと一緒にいると疲れる。」



そう、答えてしまった。




「だよねー!」

理沙たちは、笑いながらそう話している。




これで、よかった。



もう、仲間はずれなんて嫌。



一人は嫌。





放課後。いつもなら、雅と帰っている。



けど、今一緒にいるのは、理沙たち。


雅に、何も言わず、理沙たちと遊んでいる。



「優奈!これかわいくない!?」

「わー!かわいいー!」



心のない会話を交わす。


楽しくないわけじゃない。

ただ、ひっかかる。






★ ☆ ★ ☆


ピピピ...



翌日、いつもより早めにセットした目覚まし時計が鳴った。



「眠..」


昨日は、雅に何も言わないまま帰っちゃったし、


今日の朝も、一緒に登校する気はない。



というか、しちゃだめだ。




だから、雅が迎えに来る前に、家を出なくちゃ。



そう言い聞かせて、いつもは必ずやっていくメイクも


今日の朝はしなかった。




おかげで、いつも注意してた先生も今日は、何も言わず、学校に入れてくれた。



雅と一緒に登校することはなかったし、

一瞬安心したのは、私の汚れた心だと悟った。




「優奈、おっはよー!」

「理沙、おはよー。」

「あれ?優奈、元気なくない?」

「えっ..そうー?」


いけない。顔に出てたの!?



一瞬、顔を隠すように俯く。


だめだ。じゃないと、同じになっちゃう...。




笑顔を取り戻して、顔をあげた瞬間



教室のドアのそばに、よく知る黒髪の人がいた。








「雅!?」


おもわず、大声を出してしまった。



あせる前に、理沙のほうを見て、嫌そうな顔をしてから、

雅のほうへ向かった。