「ひっ……うぅ、こわい。」



1人で眠ったことなど無い。
來夏(らいか)がいたから、寂しくなかった。
いつも、優しかった。
望めばなんだってしてくれた。

なのに。



「もぉ、やだ……。」



拭っても、拭っても、溢れてくる。
泣いたことは、数えるくらいしかないこともあって、どうしていいか分からない。
擦った目は痛いし、呼吸も少し苦しい。



少し、涙が収まってきた時。
リビングに続くドアが、静かに開いた。
とっさに、毛布をかぶって身を隠す。
荒い、息づかい。
けれど、痛みや圧迫感はない。
そろそろと、毛布のスキマから見てみると……。

そこには、キラキラ光る毛並みの動物がいた。



「だれ?」
「……。」



返ってきたのは言葉ではなく、少し低めの喉を鳴らす音。
何度か質問をしてみたが、ユキが質問するたびに唸ることから、どうやら返事をしているつもりらしい。



「綺麗な銀色……。青、でも……銀色だよね?」
「……?」



犬のような、でも少し大きなその動物は鼻先でユキの頬に触れてスリスリと甘えてきた。
ふかふかの毛並みに触れると、気持ち良さそうに喉を鳴らした。



「キミは、ここに住んでるの?夜しかいないの?」



クゥン。と、困ったような鳴き声をあげて、ユキに擦りよると慰めるように頬を舐めた。



「ありがとう。」



そのまま、ユキは眠ってしまった。