「アハハハ!いいよ、そういうの。かわいいねぇ?キミ、名前は?」
「……。」
「自分はね、イオ。キミは?」
「雪兎(せと)。長澤、雪兎。」



イオは名前を聞き出すと、満足したのか玄関に散らばった瓶の破片を片付け始めた。
雪兎は、体を起こして傷がないかを確かめるようにペタペタと自身の体を触って確かめる。



「傷なんかないよー。」
「え?」



振り返れば、いつの間にか破片が袋に入れられてぐるぐる巻きにされている。



「雑巾、それね。拭いて?キミがやったんだし、トーゼン。だよね?」
「人さらいのくせに……!」



その瞬間、喉に強烈な圧迫感。
一気に頭がぼうっとしてくる。



「聞き分けのないヤツは嫌いだよー?キミは……自分の所有物なの。拒否権なんかないんだよー?」
「っ……!ちがう!」



雪兎が泣きそうな声で反論するのを、イオは楽しくて仕方ないと言った風に見つめてくる。
何故か、少しだけ悲しいような、そんな感じのする視線。
しかし、幼い雪兎は怒りに飲まれて気づかない。