「んー、やっぱり柔らかいものかな?」



部屋を出た後、近所にあるマーケットに来ていた。
あれこれと、食材を取っては戻すの繰り返し。
ついに諦めたのか、適当に肉と野菜を買った。
これでダメなら、本人に選ばせようと。



「今度は、何日持つかなー。」



スキップでもし始めそうな位に、ウキウキした声で聞きようによっては危険な言葉を吐く。
虫も殺さぬような、力の抜けた笑みを浮かべたまま。
あのイキモノを、どうやって使うか。
それを考えながら、家路についた。



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「ただいまー…っと!?」



家に入った瞬間、顔をめがけて中身の入ったハーフボトルが飛んできた。
もちろん、避けたが床はビネガーが零れて瓶の破片が散らばった。
頬に破片がかすったのか、少しチリチリする。



「あ、起きたー?」
「こっちくんな!だれだよ、オマエ!」



少し淀んだように見える2つの琥珀が、玄関にたったままのソイツを睨んだ。



「なんなんだ、オマエ。あの人はどこだ!」
「あの人って?」
「とぼけるな!來夏(らいか)さんのことだ。」



毛を逆立てた獣みたいに、その小さなイキモノは捲し立ててきた。
小さいながら、なかなかの迫力だったが。