「外に出たい?」
「そりゃ……出たいし、帰りたい。」
「そっちは無理。自分は上まで行けないし?でも、外に出たいなら出してあげるよ?」
イオは魚を照り焼きにしながら、いつものようにのほほんとした口調で言った。
ユキは不審な目で見つめたが、やがて諦めたように尋ねた。
「どうしたら、出られるの?」
「戦えるなら、出してあげる。ジェーダも、レイトも、ガラクにも行けるようにしなきゃだけどね?」
「戦う?」
今まで、自分から戦うことはなかった。
來夏(らいか)は、いつでも側にいて守ってくれたから。
けど、イオは頼りにならない。
だから……。
「やる、戦えるようになって……アンタを殺す。」
「へぇ?期待しないで待っててあげるよー。」
ユキの挑発には乗らずに、のらりくらりと返すイオ。
ニコニコ笑顔が張り付いているんじゃないかと思うくらい、表情がたまにしか変わらない。
「今日から、訓練?」
「うん、とりあえず……自分から逃げてもらうかなぁ。」
「へ?」
「体力作り。」
ニンマリ。と言う表現が正しいだろう笑顔を浮かべ、細身のナイフをくるくると回すイオ。
ユキは焦りながらも、とっさに立ち上がるとドアに駆け寄った。
「反応が良いねー。じゃあ、時間は……30分。自分に捕まったら、筋トレね?」
「絶対捕まらないからな!」
「楽しみだねぇ。」
イオは、無造作にナイフを投げた。
ユキの体に当たらないくらい。
しかし、避けなければと思わせるような場所に。