叫んで、きつく目をつぶる。
ふわりと暖かい毛並みが手に触れた。
「あ!」
「レインウルフか……。何の用?」
昨日寝る前に慰めてくれたのは、レインウルフと言う狼らしい。
昨日と同じように唸るレインウルフ、だが少し違ったのは激しい耳鳴りがすること。
「心言(ステラ)か。その子どもが、お前の子種なら……特級警備隊は黙ってないよ?」
「……。」
再び耳鳴りとうなり声がする。
「仕方ないから、負けてあげよう。傷ついたアンタに勝っても、嬉しくない。」
「レイン……。」
「……。」
見れば、レインウルフの右足の付け根にはあのノコギリみたいな刃物が深々と刺さっている。
細く流れる血液が、アスファルトに溜まっていく。
「……。」
「っ……ごめん。痛いよね、本当にごめん。」
レインウルフの背中に乗せてもらい、しばらく走るとエレベーターに乗り上へ戻ると、家の前までつれてきてもらった。
「行っちゃうの?怪我、手当て……。」
言い終わらないうちに、レインウルフは短く吠えて走り去っていった。
大人しく部屋に戻ると、まだイオは帰っていなかった。
ソファに横になると、ようやく詰めていた息を吐き出した。