「何だガキ。」
「何って来ちゃ悪いの?おじさん、商売するなら愛想位良くしなよ。」
「なんだぁ……?テメェ!」



額に青筋を立てたガラの悪そうな男に胸ぐらを掴まれ、地面に引き倒されてしまった。
息がつまるが、手足をばたつかせて何とか離れようとした。



「離せよ……っ。」
「クソガキ、躾がなってねぇな。なんなら、紫鬼(しき)のやつらに引き渡してやってもいいんだぞ!?」



紫鬼(しき)が、何なのか分からず男の手から何とか抜け出すと咳き込む。
押さえられていた喉がヒリヒリして痛い。



「なんだ、揉め事か?」
「やばい、逃げろ!青龍(ドラゴン)だ!」
「うあっ……!?」
「どけ!」



ユキは逃げ惑う住人に押され、蹴られてむき出しのアスファルトに倒れこんだ。
やっと、体を起こした頃には目の前に深い青の帽子と服を身につけた男がいた。
とっさに逃げようとして、失敗した……。



「あぅ……っ!」
「ほう、良い反応だけど……僕相手では分が悪いね?」
「痛い!っ……や、う。」



前髪を掴まれて、顔を上げさせられる。
イオに掴まれても、こんなに痛くなかったような気がする。
両腕で顔を覆ったが、状況は何も変わらない。



「さて、チームは……?」
「しらな、い。」



バシッ!

乾いた音が響く。
頬を叩かれ、アスファルトに額を叩きつけられ、ユキは痛みに涙が溢れそうだった。



「チームは……?」
「知らない!おれは、エレベーターで!」
「じゃあ、死んでみようか。」



顔色1つ変えずに、懐から出した細長いノコギリみたいな刃物をユキの眼前に突きつけた。



「……オ。」
「なんだい?」
「イオ……っ!死にたくない!」