「変な匂いがする……。」



腐敗臭までいかなくとも、油と排気の匂いが辺りに漂っている。
こんな体験はしたことのないユキには、少しきついようだ。



「仕方ない、慣れるしかないかな。」



諦めてフラフラとその辺を散歩でもしようと歩いていると、何やらガラス張りのエレベーターのようなものを見つけた。
近づくと、機械音が鳴っていて稼働していることがわかる。



「何処にいくんだろ。」



ボタンを押して中に入ると、勝手にドアが閉まり下へと動き始めた。
焦って止めようとするが、ボタンがうまく押せない。



「いたた。え、何ここ。臭……っ!」



先程とは比べ物にならない位異臭が漂う街。
思わず鼻をつまんで、エレベーターのボタンを押そうとした。
だが、よく見れば上がるボタンがない……。



「えー!どうしよう、來夏(らいか)がいたら助けてくれるのになぁ……。」



呟きながら、宛もなく歩いていく。
しばらくして、大きな通りに出ると食べ物らしい匂いがする。

人がいるのだろうと、そちらに向かって歩き出した。