起きると、何故かソファに寝かされていて。
目の前には、ホカホカのオムレツにオレンジジュース、肉の焼ける香ばしい匂いがする。



「やぁ、起きたー?昨日の傷は手当てしといたから。ごはん、食べるよね?味は……保証しないケド。」
「……。」



そのまま食べようとすると、イオがスッと手を出した。
叩かれはしなかったが、怖いことに変わりはない。



「いただきます。は?」
「なにそれ。」
「“いただきます”って言うのはねー、食べられてくれる生き物にありがとうって言う儀式。手を合わせて、食べられることに感謝するの。」



いかにも意味が分からないといった感じで、手を合わせるユキを黙って見つめるイオ。



「意味わかんない、肉は肉だし。野菜は野菜だろ。」
「……ふぅん?じゃあ、試しに狩られてみるー?」
「え……っ。」



狩られてみる?

狩られる?
殺されるってこと?

まさか……。



「ユキが言ってるのはさ、そーゆうことだよ?まぁ、近いうちに見せてあげるねー?」
「っ……いい、ちゃんとするから。」



大人しく“イタダキマス”をした方が、よっぽど安全だと思ったユキはきちんと手を合わせてから食事を始めた。

だが……。



「あははは、気持ちのこもらない合掌なんか要らないよ?」
「なんだよ、それ。」