CDを聴きながら美味しいカレーを食べ、ぺちゃくちゃ喋っていると、急にあたしの携帯が鳴った――母からだ。
母からの電話に出た。

「もしもし茜?」

「どないしたん?」

「あんなー、帰るの来週にしとったけど、パパの都合もあるから明日帰ることにしたから」

「あー、そう。わかった。」

私が返事をすると、通話口より離れた所から父の声がした。

「男の子連れてきたりしてないやろなー」

久しぶりの父の声。母は父と一緒に居るらしい。

「パパ、あたしのこと信じてへんのん?」

普段は“父さん”と呼ぶが、私の機嫌がいいときや 冗談を言うときはパパと呼ぶこともある。
母は『パパ、ママって呼ぶ癖ついたら 将来、歳とっても直らへんし、恥かく』という。
だから私は小さい時から“お父さん、お母さん”と教えられてきた。
今ではパパ、ママでも恥ずかしい思いをしないほど 日本は西洋風の文化が広まってきたが、それでもそう呼ぶ子は少ない。呼ぶ子は大抵金持ちの家の子が多い。

「パパは茜のこと信じてるでー。」

「ほな放っといて。」

「ツルちゃん、茜口悪なってない?」

ツルちゃんとは母のこと。父の声が遠くなると同時に母の声が通話口から聞こえる。

「茜、明日の昼頃着く予定で新幹線予約したし、あんた家居るなら荷物開けるの手伝ってや。」

「わかった。絵里奈今日泊まるから。」

「うん、それで?」