―――――――…



「ん……」


体に重怠さを孕んだ違和感を抱き、ゆっくりと瞼を開ける。


直後、見慣れた物が並んでいるデスクが視界に入って、慌ててガバッと上半身を起こした。


「あ、起きたか」


同じ列の二つ先のデスクに座っていた先輩と目が合い、いつの間にか自分が寝てしまっていたのだと気付く。


「もう電車あるぞ」


その言葉に時計に視線を遣れば、8時を過ぎていた。


始発どころか、もう何本も電車が走っている。


3時を過ぎた頃にようやく仕事を終えた事は覚えているけど、それから30分が過ぎた頃からの記憶がほとんど無い。


「すみません……。私、寝ちゃったんですね……」


「別に仕事は終わったんだし、問題ないだろ」


辺りをキョロキョロと見渡せば、先輩と私しか残っていない。


「……先輩、帰らなかったんですか?」


「……まぁな。俺もさっきまで仕事してたし」


もしかして……


私を待っていてくれた、なんて思うのは自惚れだ。


ちゃんとわかっているのに、肩に掛けられていたスーツのジャケットが誰の物なのか気付いた瞬間、つい期待せずにはいられなくなってしまった。