「あなた達、そろそろ帰っていいよ」


入社1年目の後輩達に声を掛けると、彼らは戸惑いを見せた。


「残った仕事は、急ぎの分から片付けておくから」


本当は新入社員の人手だって欲しいところだけど、来月はもっと忙しくなるだろうから今は少しでも休ませてあげたくて、ニッコリと笑って見せる。


「今週はずっと頑張ってくれてたから、今日は帰っていいよ」


もっと早く帰らせてあげたかったけど、終電まで後数本というところだろう。


「って言っても、もう結構遅いけどね」


苦笑を浮かべた私に釣られるように、後輩達が疲れた表情で笑った。


「来月はもっと頑張って貰わなきゃいけないから、明日と明後日はゆっくり休んで」


戸惑いを見せたままの後輩達は、申し訳なさそうにしながらも帰り支度を始める。


その背中を見送り、自分のデスクに戻った。


終電を逃すのを避けたいという理由で、次第に社員が減っていく。


この時間に帰宅する社員の大半は、きっと明日からの2日間の休日を返上するのだろう。


私はそうなる方が嫌だから、数名しか残っていないフロアの一角でタクシーか始発で帰宅する覚悟を決めた。