「ちえも!
ちえも諦めたいって思ったこといっぱいあるよ!
でも、……俊ちゃんのこと、やっぱり大好きだったから」
知ってる。
いつもイチャイチャしてるバカップルなふたりやけど、最初からずっとあんなんやなかったって。
付き合う前にはふたりにも色々あったって聞いたし、実際にこの目で見てきた部分もある。
すれ違って、泣いて。
それでもふたりで乗り越えて。
そんなんがあったからこその言葉やってわかってるけど、あたしは……、
「達郎に好きって言われる想像が出来ひんねん」
掌をすり抜ける水よりも遠い、雲みたいな想像で。
触れることさえ無理やねんかさ。
ほら、あたしらお互いまだ中学生やし、お母さんらが気にするから遠出とか出来ひんけど。
それでも、ふたりで出かけて遊んだこと、ある。
回し飲みとかしょっちゅうやし、6年生の時の運動会の演技で一回だけ手も繋いだ。
ちっちゃいことやけど、あたしにとったら大事な思い出いっぱいあるのに。
どんだけ頑張っても、好きって言われるわけないって思う。