「ふたりとも両想いだって丸わかりなのに、ちっとも動こうとしないんだもんなー」
「わたしとか友美とか、どれだけの人が心配してたか」
「ほんとそうだよね!」
「あんちゃんが諦めるって言い出したから、これは嵌めるしかないなーって思ったんだー」
待て待て。
聞き捨てならんセリフやぞ。
「普通に告白すすめてや!」
そうしたらこんなややこしいことなってなかったのに! と思って言うと、返ってきたのは正論。
「それで聞かなかったの、あんちゃんでしょー?」
「うっ」
いやでも……そんなんってなぁ。
あたしはうう、と頭を抱えた。
別の話題で盛り上がり始めたみんなを前にため息。
飲み干したオレンジジュースのおかわりを貰いにリビングから抜け出す。
ジュースを注ぐ寸前にトン、肩を叩かれる。
むすっとした達郎があたしの手からグラスを奪って、キッチンに置いたまま引っ張って行く。
え、ちょ、どうしてん。
なんやなんや。
階段まで登らされて、デートのために買ってたあのキャンドル・オレンジのワンピースがひらひらと揺れる。