「っだー、もううるっせぇなお前ら!
隣の俺の席にまで来るな!」
そう叫んだのは、微妙に天パっぽいくせっ毛の男子。
かっこいいよりは普通って感じの顔。
しっかし態度悪いなー。
「ほら、あんまりお前らが騒ぐから転校生疲れてんじゃん」
そいつがそんな風に言ってくれたおかげで、口々に「ごめん」と言われる。
少し人数も減って、だいぶ呼吸がしやすくなって、気が楽やわ。
……もしかして、コイツ、ええヤツ?
「ありがとう。えっと……」
「俺、逢坂 達郎。
よろしく、こしあん!」
「……は? こしあん?」
「道越 杏奈ってすげぇ面白い名前だよな。真ん中読んだら『こしあん』とか。
お前の中あんこ詰まってそう」
「はぁ⁈」
突然言われた内容が失礼すぎて、カッチーン。
頭に血が上る。
「そんなん言うけど、あんたかて『つ』抜いたら『大阪太郎』やんけ!」
「なんだよそれ」
「市の書類に度々出てくる有名人(ある意味)やん!」
「知らねぇよ」
「くっそ、ここ大阪ちゃうんやった!」
記入例はいつも『大阪太郎』やったのに……。
まさか伝わらんとか。
睨み合って、言葉を投げつけ合って。
いいヤツかもって思ったのに! と歯をギリリと噛み締める。