イヴの約束は優しくって、愛しくって。
だから、つい。
忘れてた。
騙してんねん。
可愛いちえも、優しい俊介も、友だちもクラスメートも。
────大好きな、達郎のことも。
虚しくなる。
哀しくなる。
それでもいいからってずっとすがって、手を離されへんかったけど。
でも、あかんのちゃうん?
もう、無理やろ?
壊れる音が、した。
がしゃん。
落としたペンケース。
はっとこっちを見るふたり。
あたしは、泣き出しそうやった顔を笑顔に変えた。
「達郎さー、勝手にあたしの教科書貸すとか普通にあかんやろ。
6時間目に使うねんで?
急になくなってたら焦るやん」
上履きが床と擦れ合って、音がする。
「まぁ、いいけどさぁ。
俊介やし、あんたと違って落書きとかせんやろ」
あははっと声を上げる。
「杏奈!」と強く呼ばれて、わざと合わさへんかった目を達郎に向けた。
色のない顔をした達郎。
どうしてん、表情筋固まってるやん。