むすーっとしながら、教室に入って、そんで文句のひとつやふたつや思い切ってみっつくらい、言ったんねん。
そう思ったけど、ぴたり。
足を止める。
……中から聞こえる会話の話題があたしのことになったから。
「達郎たちはイヴ、どうするか決めた?」
「俺たちって?」
「わかってて言ってるだろー。
杏奈のことだよ」
「う。…………出かけることになった」
「ふ、ははっ、よかったな。
念願のデートってわけだ」
「うるっせぇよ!」
達郎に釣られるように赤くなって、あたしの頬がじわーっと熱を持った。
嬉し恥ずかしってやつやな。
せやけど、それはあっという間に冷めてしもた。
俊介の楽しそうな、あっけらかんと告られたその言葉。
聞きたくなかった。
思い出したくなかった。
「罰ゲームでだったけど、告白してよかったなー」
あたしの恋は、間違いだらけやって。