「あんちゃん?
ボーッとしてたら置いて行っちゃうよ?」
ちえの声にはっとして、周りを見る。
あたしらのグループしかいない教室。
そうやった、今は昼休み。
でも次は理科の実験やから、もう移動せんと。
「待って待って」
ペンケースと教科書を持って、慌てて3人を追いかける。
でも、そわそわしとったからかな。
「あ、ノート忘れた!」
「実験に使うプリント貼ってるから、取って来ないとダメじゃん」
「うっわマジでかー。
急いで取って来るし、先行っといて!」
りょうかーい、との声を受けて、歩いて来た廊下を逆戻り。
ペタペタパタン。
音が響く。
角を曲がったところで見えたのは、あたしの教室に入って行く達郎と俊介。
「ちえー、国語の教科書貸してーってあれ? いない」
「教室移動したっぽいし、これでいいんじゃね?
ほら、杏奈の教科書」
近づけば、そんな会話。
っていやいや、あんたなに勝手なことしてくれてんのよ。
しかも俊介、悩んだ末に結局受け取るしな!
あたしの机勝手に探られたんやけど!
ちょいとお兄さん、そこ注意してくれへん⁈