「ほい」
「むぐっ⁈」
口の中になにかを突っ込まれる。
甘いこの香りは……いちごみるくパン。
半分に割った片割れをあたしにも食べさせようと思ったらしい。
雑やな。
チョコツイストパンも半分に千切って、残りをあたしに押しつける。
達郎もパンを齧りながら「じゃあなー」と教室を出て行った。
ほんま嵐みたいなヤツ。
……ってかさ、これってもしかせんでもあれやんな。
『あーん』、やんな。
「〜〜っ」
「杏奈、顔赤いけどどうかした?」
「ほっといて!」
「え?」
どうしようもなくなって、パンを齧る。
くそ、くそ!
めっちゃ恥ずかしいわ!
照れ屋のくせになにさらっと恐ろしいことしてくれてんの。