「どうせお前のことだから甘いヤツがみっつ入ってるセットだろ?
俺、いちごみるくパンがいい」
女子か。
「嫌やわ!
俊介もたしか今日はパンやろ。
あっちに頼んだらええやん」
なー、と友美たちに言えば……なぁあんたら笑ってる?
笑ってるやろ?
堪えきれてへんぞおい。
「だって俊介に言ったらひとつじゃ足りないだろっていっぱいくれそうだし」
「あぁ……」
お兄さん気質なんはええねんけど、俊介はたまに心配しすぎて余計なことをしたりする。
から回ってんのよなぁ。
「そしたらもう、杏奈しかいねぇじゃん」
……わかってる。
今日、パンの人が俊介の他にあたししかおらんかっただけ。
それでも、頼ってもらえて嬉しいって思ってまうやんか。
しゃーないなぁって笑って、渡す。
貢ぐ人の気持ちが一瞬わかってしもた気がするわ。
危ない危ない。
あたしの行動ひとつで達郎が喜ぶんやったらって。
わざわざ来てくれたんやからって。
パンくらい、安いもんやんって気になってきた。