「あ、杏奈だ!」
友美がひらひらと手を振る。
パタパタと駆け寄って笑顔を浮かべた。
「おかえりー」
「んー、ただいま。
なんの話しとったん?」
自然に、自然に。
なんてことない風を装って尋ねる。
「杏奈には関係ねぇよ!」
「っ、」
「照れてるからってひどい言い方しちゃって。杏奈が可哀想じゃない」
あたしの代わりに怒ってくれる万里奈に小さく笑顔を向ける。
「こいつがひどいんはいつものことやし、気にせんでええよー」
そう、バシバシと達郎を叩く。
「いた、ちょ、やめろよ」
「うるさいうるさい。
今からあたしはお昼食べるんやからさっさと帰れや」
イーッと歯を見せる。
ぐいぐいと背を押すと、振り返った達郎にその手を取られる。
「それなんだよ」
「なんの話や」
「昼飯忘れた」
「ぷっ。ご愁傷様」
「パンひとつくれ」
なんやと。
まさかのあたしにたかるんか。
そう思いつつ、話の内容だけやなくて、あたしが気になったところ。
それは……
「あたしが今日パン買う日やって覚えてたんや」
「え、それくらい覚えるだろ。
毎日こんだけ一緒にいるんだぞ?」
……う、嬉しいとか、思ってないからな。
そんな、ちゃう。
ちゃうもん。