光を受けても冷たい木枯らしが、裏口の扉を強く閉める。
悲しみを含んだ空気は、もうすぐ雪の季節がやってくることを伝えていた。
一年が早いか遅いかはわからない。
ただ思い出の中では、時はずっと止まっているのだということを知った。
私の心は、ずっとあの時から前に進んでいない。
指先の感覚を確かめながらドアノブを握る。
残された空間に割り込むように、後ろから懐かしい音が響いた。
ブォロロロロロ……
振り返った奥から、こちらに近付いてくる一台のバイク。
照らされた車体が、目に痛い。
「えっと……。
俺、今日からお世話になります松田ヒロミです。店長さんは中ですか?」
メットを外し、
ゴーグルを首に下げる。
ちょっと長めの髪が、正直気に入らなかった。