初めて会った駐車場。
「もう行かなくちゃ」
あの時の懐かしい気持ちは、きっとそのせいだった。
私は黙ってうなずいた。
辛くないわけはない。
でも『裕海』がここに来た理由を、ちゃんと理解したかったから。
笑顔で別れなければいけないと、強く感じたから。
「また会えるのかな……」
私は独り言のように静かに言った。
「いつか会えるよ」
メットを着け、
『裕海』がSRに足を掛ける。
軽く振り返り右手をあげた。
私も笑って、右手をあげた。
音も立てずに進む
メタルグリーンの風。
遠くに消える瞬間まで、
メットの後ろに貼られたあの時のシールは、恥ずかしいくらいに目立ってた。
遥香……
「こんな所まで会いに来てくれてありがとう、裕志」
冬の訪れを前にやって来た
笑顔の前線。
またいつか、メタルグリーンの風に乗って会いに来てくれると信じてる。
私はその時まで、この笑顔を絶やすわけにはいかない。
end