少し高い位置の私に、それでもなお高い場所からうつろな瞳を優しく向けてくる。



ずるい……

今そのセリフはずるいよ。




もう一度、
逢いたいと願っていた。

もう一度、
触れたいと思っていた。




いつの間にか握られた手。
膝にいくつもの涙を落とす。



海の風はとても冷たいのに、なぜか心が……こんなにも暖かい。




声も出せないまま
私はただ泣き続ける。

『裕海』は黙って、
そんな私を見つめていた。



気付いてしまったことがわかったら、もう会えないかもしれない。

そんな気がして、私もそれから何も言わなかった。




想いの波が落ち着くまで、『裕海』は私を優しく包んでいた。