大きな交差点を抜ければ、そこはもう海沿いの道。

メタルグリーンのSRは、どんどん風に溶け込んでいった。



「曲がる時一緒に傾いてくれると助かるなー」



ヒロミの声に、メットをぶつけて答える。



「うん。うまいうまい!」



海の青に映えるメタルグリーン。

陽の光で私達は影になり、一つの大きな風になっているのだろう。

抱える背中が、ずっと待っていたもののように思えた。





防波堤の前にバイクを停めて、シートに二人で腰掛けた。

シーズン違いで人はまばらだけど、ヒロミとの会話で辺りが賑やかに感じられる。



取り留めのない会話。

まるで二人は、
昔からの知り合いのよう。




波の音が変わる度、流れていく時を感じた。



「実はさ、今日でこの街とはさよならするんだ」



下を見て、細くつぶやくヒロミ。

私は何も言わなかった。



心のどこかで、
感じていたんだと思う。



「遠いの? 行く所」


「うん、そうだな。
ここから空くらいかな」



ヒロミが見上げる。
私も顔をあげた。



「遠いね……」