「よっしゃ拓海!今度からずっとスタメンだぜっ!!」
スターティングメンバーの発表が終わり、肩を組んできたのは
小野寺 旬(おのでら しゅん)
同じスターティングメンバーでとても気もあう。
「よかったよな!!次からずっとスタメンなんて!」
「そうだな!」
「ほんとかよー。なんか反応薄いけどよ」
「ほんとだって!!こう見えても安心してんだって」
内心、安心していると同時にすごく嬉しいのは俺も同じ。正直すっげぇ嬉しい。
ふと前を見ると、小さくガッツポーズしているチビが目にはいる。
「七瀬あんな喜んでるし」
「アイツ…。バカだよな」
感情をおもてに出しすぎだろ。スタメンじゃないやつらから見れば嫌味にしか見えないだろうな。あのバカ。
「なぁ、拓海って七瀬のこと好きなの?」
「はっ!?い、いや。なんで」
急に思ってもない質問を旬がするから無駄に焦ってしまった。
「いやぁ、なんか七瀬に優しいし、一緒帰ったりしてるし、結構気にかけてるみたいだし…。もしかして…とか思ってたんだよね」
ひやかすような目で俺を見る旬。
ここは冷静に"違う"と否定するべきところだ。
冷静に、冷静に…
「それは、昔から仲良いし、帰り道一緒だからだって!好きじゃねぇよ!!」
ハハッと笑って見せたが、旬はまだ何か納得のいかない表情。
「ふーん。そうかねー?」
「マジだって!!旬のほうこそ彼女とどうなの?」
このままだと旬にいろんなこと聞かれて、面倒になりそうだったからすぐに話を変える。
旬は単純だからすぐに話しに乗るだろうから。
「それがよ!!聞いてくれよ…って。あ、やべ!俺、今日塾あるんだった!ごめんな拓海っ、また今度っ!!」
"すまん"っと手を合わせて、そそくさと旬が帰って行った。
『旬のやつ…変に鋭いよな』
そんなことを考えながら、ふと前を見ると優がいたから、頭をポンと軽く叩く。
"七瀬のこと好きなの?"
ふと旬のさっきの質問が頭をよぎり、すぐに手を引っ込めた。
そんなこと聞かれても、本当のことなんて言えるわけねぇよ。
"好き"なんて、そう簡単に言えるような軽い言葉じゃないんだよ…