「拓海」

「いっつもスタメンだったんだからスタメンだってわかるだろ。てか聞こえてるぞ」


せせら笑うように私に言う。






「いやっ、もしスタメン外されてたら嫌じゃんっ!!」


「お前は外されねぇだろ。いい司令塔なんだからさ」



ばっと拓海を見る。だって…



拓海がバスケに関して誉めてくれたのって初めて…




だから。






「本当に!?私、ちゃんと正確なパス出せてる!?本当に!?本当に!?」

嬉しくて、食い入るように聞いてしまった。





「前が下手くそ過ぎて上手くなったように見えただけだ」


"錯覚、錯覚"と否定する拓海。




「な、何それっ!?ひっど!!最低っ、バカバカ」

パシと拓海の腕を叩く。



初めて素直に誉めてくれたと思ったのに…






結局否定するんだ。

なんでこんなにも素直じゃないんだろう。逆に不思議だな




「素直に言えばいいのに」

笑いながら拓海に言う。





「バカか、本当のこと言ってるだけだ」




そう言うとスポーツバッグを斜めにかけて、校門を出ていこうとする。





「あ、待って!まだバッグ持って来てないっ」


慌ててバッグを取りに行こうとした。



「おいっ」

拓海が叫んだから、後ろを振り向くと、私のバッグを拓海が持っていた。




「あ、持ってきてくれてたんだ!!ありがとう」


バッグを受け取ろうとすると




「お前、転けそうだしな」


そう言うとまた自分の肩に私のバッグをかけた。




こんなに優しいんだから、素直に言ってよ。

"持ってあげる"って。



そしたら私も心おきなく甘えられるのに…






「ありがとう」