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まだ薄く靄のかかる早朝。
庭からは木刀が風を切る音が響いていた。





足を忍ばせて眺めていた由紀は溜息をついた。



「なんでこんな早くから…」


ここまで早く起きれば誰も鍛錬などして居ないと思っていたのだ。




もう体に痛みはない。昔から傷の治りが異常に早かった。



由紀は毎日欠かさず早朝に鍛錬をしている。
いくら他所といっても、強さを保つには日々の鍛錬が必要だ。


だから、朝練はかかしたくなかった。
だから誰にも合わぬようこんなに早く起きたのに…。






気配を消す事には自信がある。




柱の影から彼の練習の様子を眺めた。





由紀より少し身長が高く、細身だが程よく筋肉の付いた身体。

左耳の下辺りで、緩く一つに纏められた漆黒の綺麗な長髪。
切れ長の真っ直ぐな瞳。



かっこいい、より綺麗という言葉の似合う好青年だ。


名前は忘れてしまったが幹部であった気がする。






(そういや新選組幹部って男前な人が多かった…)




「…ま、邪魔をしないうちに山崎さんの部屋へ帰るか。」



このままではどのみち彼には気付かれてしまうだろう。






ずっと上からついてくる気配。


(山崎さんも御苦労な事で。)




そう思うと、由紀は部屋へと戻って行った。