次に詩依と出会ったのは思っていたよりもはやく、月曜日のバイトが終わった後だった。

 この約2日の間に、詩依に「ご飯でもどう?」と1度だけメールをしてみたのだが(それはもう、勇気を振り絞って)返事はなかったのに。

「…何してんの、こんな時間に」

 深夜12時過ぎ、店を出たらいつかみたいに煙草を吸っている詩依が居た。

「こんばんは」

 …何がこんばんはだ。人のメールも返さないで呑気に現れて。
 だけどまったく、憎めない。むしろ会えたことが嬉しかったりする。
 …やばいなあ。

 詩依は煙草を消して、

「煙草切らしちゃった。買ってくる」

 そう言って店内に入ってしまう。備え付けの灰皿には、煙草の吸殻が溜まっていた。ほとんどがマルボロメンソールのもの。

「…あんま吸うと体に悪いんじゃない?」

 煙草を二箱持って帰ってきた詩依に言うと、詩依は少し笑っただけだった。

「――なんか元気ない?」
「ねえ、どっか行こうよ」

 問いかけの返事はなく、目をあわせずにそんなことを言う。

「どっかって、こんな時間から?」
「うん、こんな時間から」
「例えば?」
「どこでもいいよ」
「どこでもいいって言われても」

 …沈黙。

 詩依は俯いていて、表情が見えない。

「…やっぱり、帰るね。いきなりごめんね」
「え、」

 TシャツにGパン姿の詩依は、すたすたと歩いていってしまう。

「待てって」

 敷地を出たところで腕を掴んだ。…思った以上に細いな。

 思いきって詩依の顔を覗きこむと、――なんと泣いていた。