その後も適当に歩き回って写真を撮る詩依について回って、あまり会話もなく動物園を出た。

 今度は公園をぶらぶら散歩して、少し疲れたからベンチに座った。自販機で買った冷たい紅茶を飲む。

「これ、この前撮った写真なの」

 差し出された写真を見ると、いつの間に撮っていたのか、足首まで海に浸かった俺の後姿が右端にぽつりと写っていて、後は海と空が全体を占めていた。

 空は淡い青で、海も優しい色をしている。
 遠くに見えるのは、水平線。

「へー…綺麗だな」
「あと、こんなのとか」

 砂浜に並んで脱ぎ捨てられた、パンプスとスニーカー。

「お、なんかいい気がする」

 俺が撮ったら絶対こんな風におしゃれな感じにはならない。

「他の写真は?」
「他は…また今度見せるよ」

 詩依はあいまいに笑って、写真を鞄にしまった。一方の俺は、「また今度」という部分に密かに期待してしまう。

「――帰ろっか」

 いつだって始めるのは詩依で、終わらせるのも詩依だ。

 次に会えるのはいつなのか、気になった。