「冗談言ってないで、早く準備しなさい。
朝ごはん、パンでいい?」

お母さんは相手にもせず、定番のハムエッグを作ろうとフライパンを火にかけた。


本気なんだけど……

左手が冷蔵から取り出した牛乳は、ガラスコップに移された。


「だいたいさ、お母さん。
高校生にもなって出校日があるっておかしくない?」


食卓テーブルにコップを置く手に感情が込められると、ガンッと音が鳴り牛乳が少しこぼれた。


「お母さんに言われても困るわよ。
そんなに文句あるなら先生に言いなさいよ」

と、言いつつも母の手は休まない。熱せられたフライパンに割られた玉子が入れられ、ジューと音がする。


「いたのよ、1年の時。
なんであるんですかって先生に抗議した果敢(かかん)な男子が」


「で?どうなったの?」


「先生だって知りたいよって逆ギレされて終わり」


「でしょうね。
まっ、これで最後なんだから諦めて行っといで。
どうせ半日なんだし」


お母さんはハムが一枚だけのハムエッグに、さしてなぐさめにもならない言葉を添えてテーブルに置く。そのハムエッグを恨みを込めてフォークでつくと、半熟の黄身がトロリと流れた。



その半日がどれだけ苦痛か、お母さんは知らない。


いつか、学校裏サイトでこの出校日始めたやつ探し出してやる。