「おまたせしました。
じゃ、車に乗って」

と石井さんの許しを得て、2人は車に乗り込んだ。

最後に乗った石井さんは首にかけたタオルでひたいから流れる汗をふいた。そのポケットからは、くしゃくしゃの白い封筒が顔を出していた。


石井さんは、汗をふいていた手をポケットにもって行き、封筒を取り出すと

「吉元さん。
これ、今回の給料明細。
多部さんの分も一緒に振り込んでいいんですよね」

と言い、隣に座る華子さんに封筒を手渡した。


石井さんの言葉に、私はキョトンとした。「えっ?」と、声にならない声が上がる。


助手席の華子さんはというと、口を半開きのままの私など意にも介していない。その封筒を雑に受け取ると、さっと中身を確認し素早く自分のカバンにしまった。


後部座席から身を乗り出した私は、助手席の華子さんの横に顔を出し抗議した。


「どういうことですか?華子さん。
ちゃんとわたし用の給料って発生してるじゃないですか。
まるで自分の給料から出したみたいな雰囲気だしてたけど。

ねえ、華子さん。
ちゃんと説明してくださいよ」


華子さんはいかにも煩わしそうに手をパタパタと前後に揺らしあっちに行けと身ぶりした。


「うるさいなー、ごちゃごちゃと。
あたしは何にも言ってないわよ。
あんたが勝手に誤解したんじゃない。

それから朝ごはん。
あたしはいくら丼でいいから。
函館の朝市行こうね。
約束だからね」


なんの良心の呵責も感じていない華子さんの姿に、私の中で泡を立てるマグマのように怒りがわき上がった。


「高校生にたかる気ですか?!
オニーーー!
悪魔-----!!!」