そうだ、こんな時こそ……と私はポケットに押し込んでいたスマホを取り出し、『ナイトの国』の仲間にアドバイスを貰おうとインターネットサイトを開いた。電源を入れ、インターネットサイトのアイコンをクリックした私は小首を傾げた。


ん?

見慣れないグレーの画面に『ページが開けません』の冷酷な文字。


『ページガヒラケナイ』ってどういうこと?
スマホ壊れた?


何度か同じ操作を繰り返したが結果は同じ。

ためしに、細かく振ったり、軽く叩いたりしてみたがやっぱり同じ。




「なに、やってんのよ」


顔を上げると、華子さんが両腕を組みながら仁王様のように立っていた。


「華子さん、私のスマホ、壊れちゃったみたいで、インターネットつなげないんです。
困ったなー」



手に持つ最新通信機器を頭の上にかざしたりくるくると回したりしている私に、華子さんは心からの罵倒を浴びせた。背中からは苛立ちの炎が、めらめらと揺らめいている。


「初めて会った時からバカだとは思ってたけど、ここまでくるとかわいそうになるね。

ここはね、海の上なんだよ。
ネットも携帯も、繋がるわけないでしょ!」


私は心底、驚いた。中途半端な知識が、一般常識だと自己主張する。


「えーー?!
でも、ここって、日本国内ですよね。
日本国内って98パーセント、携帯電話繋がるんじゃないんですか?

どこのメーカーでもだめなんですか?
ワイファイも使えないんですか?」


「なによ、そのワイファイって。
とにかく、どこの何使ったって海の上では携帯は使えないの。
その人よりだいぶ足りない頭に、刻みこんどきなさい!!

で?
見つかったのかい?」


「こっち側の雑魚寝できるとことシート席は全部見たけど、いませんでした」


華子さんのもともと暗い表情が、輪をかけて曇る。そして考え込むようにぼそっと、つぶやいた。

「まずいな」