目を離すなって……この部屋で?


窓際にある椅子に座り真っ暗な海を見るさやかさんの顔が、窓に反射して映る。


私は向い側の椅子に座り、太ももに頬杖をついて、さやかさんを見た。瞬きもせずじっと見つめる私の視線に気づきこちらに顔を向けると、さやかさんは全てを見透かしたようにほほ笑んだ。


「ねえ、莉栖花ちゃん。
学校は楽しい?」


さやかさんに嘘やごまかしは失礼な気がする。


「高校ですか?
うーん。
恥ずかしいけど、わたし、学校にはあんまり友達いなくって……

ていうか、本当の友達って1人もいないのかも。

だから、こう、みんなの中にいても浮いてるっていうか、浮かないように無理してるっていうか、疲れちゃうって感じで」


「そっかー。私から見たら高校生なんてなんでもできて羨ましいけどね」


「そりゃ、さやかさんみたいに美人だったら自信もあるだろうし、毎日楽しいと思いますけど……」


さやかさんは、再び視線を窓に移し返事もしなかった。その真意はガラスに映る表情からも計り知れない。


暗い話題になったと後悔し、慌てて取りつくろった。


「あっ、でも私、友達がいないわけではないんです。
ネットの中だけですけど」


「ふーん。
ネットの中の友達って、どうやってできたの?」

と、私を見るさやかさんの表情は優しい。


「それがぁ、わたし、織絵ルーナのファンなんです。

そう、バーチャルアイドル。知ってますか?

私も自作てバーチャルの動画作ってて。
いえ、ぜーんぜんたいした物じゃないんだけど。

でも、レベルアップしたくって、ルーナの動画作ってる会社のツイッターフォローして…。
そしたらフォロアー同士で仲良くなって……」


そう熱弁すると、さやかさんは呆れるでもなくうなづきながら話を聞いてくれた。