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慣れないベットといつもと違う生活リズムのせいか、私は浅い眠りをただよっていた。


2時間ほど、睡眠と覚醒(かくせい)の間でうつらうつらと過ごしていると、華子さんとさやかさんの会話が耳に入った。


「……どこ行くの?」


「あら、吉元さん。
起こしちゃった?
ごめんなさいね。
なんか、眠れなくって……
ビールでも飲もうかと思って。

指示書でもビール小一缶までなら飲んでいいってなってるでしょ」


ベットを仕切っていたカーテンを数センチ開け、2人の様子を見る。ドアの前でハンドバックを手にし靴を履こうとするさやかさんを華子さんが制していた。


「ううん、この部屋から出ないで。

子リス、子リス。
降りてきて。
あんたさー、ビール買ってきてよ」

と、華子さんは私が起きているのを知っているかのように呼んだ。


私はカーテンから顔を出し、目を擦りながら眠そうな演技をした。

「えー、でも、わたし未成年だからまずいんじゃないですか?」


チッと舌打ちし鼻にシワを寄せる華子さんは『役立たず』と言いたげだ。それでも法令遵守(じゅんしゅ)は理解しているらしい。華子さんは苦々しい表情で言った。


「分かったよ。
じゃあ、あたしが買ってくっから、桐生さんはここにいて。
子リス、おいで」


手招きされ、2段ベットのハシゴを降りた。すると、華子さんは私の肩に手をまわし、「目はなすんじゃないよ」と耳元で囁いた。その語気に有無を言わせない迫力がある。



部屋を出た華子さんのパタパタと走る足音が徐々に小さくなっていった。