『出港します』
のアナウンスと共に、窓から見える景色がゆっくりと動く。船は思ったよりも揺れず、快適だ。
窓にへばりつき青森の夜景を見ていた私の心は、一気に晴れた。
フェリーに乗るなんて、家族旅行で大島に行って以来。高校の修学旅行は沖縄だったから、北海道に行くのも初めて。やっぱりこの仕事、ラッキーだったかも。
「ほら、船に乗ってるの4時間半だけなんだから、さっさと歯磨きして寝るよ」
と、華子さんは私のTシャツの襟元を背後から引っ張り、窓から剥がした。
「えーー?
シャワーは?」
当然の権利を主張した私に、華子さんはとがめるような強い視線を投げかけた。そんな華子さんに、従うしか手立てはない。
「無理ですよねー。
はい、はい。
さっさと寝ます」
汗臭い身体をタオルで拭き、私は大人しくベットに収まった。