「はい、ここです」
石井さんは数字の書いたドアの前に立ち止まると、鍵を開けドアを引いて女性陣を部屋に招き入れた。そして、3人が部屋に入ったのを見届けると、ドアからチョコンと顔を出した。
「ベット4つあるけど、僕はそっちの雑魚寝できる所に行くんで。
ここは3人で使ってください。
深夜3時前に到着予定だから、そのころ、戻りますね」
と言い残し、さっさと消える石井さん。
石井さんは丸顔のため、実年齢より若く見えるのかもしれないが、それでも30歳代前半。
気を遣ったというより、個性豊かな女性陣(私以外は)に恐れをなしたのかもしれない。
フェリーの個室は、案外広い。
ドアを開けるとすぐ左右に2段ベットが。
奥の大きめの窓手前には小さいテーブルと一人掛けのソファー椅子が2つ向かいあっている。
「わたし、ベッド、上でもいいですか?
うれしーー。
わたし一人っ子だから、2段ベットって憧れてたんです」
キャッキャッとはしゃぎ、ベットのハシゴをよじ登った。そんな私を冷ややかな目で見ていた華子さんは、何も言わず下のベッドに自分のカバンを放り投げた。