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次の日、

夜の10時過ぎ。


私は……

海の上にいた。




華子さんの持ってきた仕事は、この前病院で会った黒髪ストレートヘアの美女、桐生さやかさんを福島の病院まで送り届けること。介護タクシーのドライバー、石井さんの運転で車は快調に北上していた。


高速使ってパパッと送ったら、福島でおいしいもの食べて、ホテル泊まって、次の日帰ってくる……って楽勝じゃん。しかも、後部座席でこんな美女と並んで座り、おしゃべりしてるだけなんだから、ラッキー!

と、思ったのもつかの間。


車は、福島のインターチェンジを悠々と通り過ぎた。


フロントガラス越しにインターチェンジの看板を見送った私は、運転席と助手席シートの間に身体を入れ、石井さんに尋ねた。


「あれ?
福島のどこで降りるんですか?」


石井さんは『何言ってるの?』という表情でちらりと見返した。


助手席に座る華子さんは、もう数時間も前から熟睡している。華子さんの態度に、私の不安は募る。


「福島……ですよね。
今日の目的地」


石井さんはばつの悪そうな顔をし、坊主頭をポリポリ掻いた。


「そうだけど、あれーーー、聞いてない?
ホント、聞いてないの?
福島っていっても、北海道にある福島町だよ」


……
……
……

えーーーーーー?!
福島町???!!!


急いでスマホを取り出し、福島町を検索。

北海道函館市を南下。
青森の竜飛岬と向かい合った辺りにある……
福島町?!


という理由(わけ)で、私達は今は青森から函館に行くフェリーの中にいます。