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目を開けると、そこには真っ白い天井があった。驚き、ガバっと起き上がる。


すると私に気づき、背中を向け座っていた保健室の先生がメガネを人差し指で上げながら振り返った。


「あーー、目覚めた?」


「あれっ?わたし……」


周囲を見回さずともそこが保健室であることはすぐに分かる。


でも……なんで?


必死で記憶の糸をたどり、今、置かれている状況を納得できるよう時系列に沿って並べた。しかし、どうしても記憶の途中で途切れてしまう。


私、どうやってここに来たの?


中年の先生は立ち上がり、ボタン全開で羽織っているだけの白衣をひるがえすと、私の顔を見ながらゆっくりとベットに近づいてきた。


「んーー、3年4組の多部 莉栖花(タベ リスカ)さんだよね」


「は……い」


「学校出た所で倒れたって1年生が運んで来てくれたのよ。
病気かなって思ったけど、よくみたら寝てるだけみたいだったし、まっ、ちょっと寝かして様子みようって」


先生はベットの横に立つと、私に顔を寄せた。


「で?
どう?調子は。
気分悪くない?」


空気を読むことに関してだけはエスパー並みに敏感な私は、のぞき込む先生の目が『明日から夏休みなのにメンドクサイなー』と言っているのを感じとり、精いっぱい元気に返事した。


「はい、大丈夫です」


私の健康状態とは別の理由で、先生はホッとした表情を見せた。


「遅くまで起きて勉強してた?
それともラジオでも聞いてたの?」


「はあ、まあそんな感じで……」


苦笑いしながらベットから降りると、掛け布団をおざなりに整えた。


「明日から夏休みだけど、ほどほどにしなさいよ。夜ふかしの癖つけたら昼夜逆転しちゃうからね。
一人で帰れそう?」

と先生は最低限の義務を果たす。


「帰れます」


椅子に置かれたカバンを無造作に掴み、素早く頭を下げた。


「ありがとうございました」


「こんなこと繰り返すようだったら、一度病院で診てもらいなさいよ」


先生の言葉を最後まで待ち切れず、私は保健室を後にした。保健室には、先生の忠告が1人淋しく、おいてけぼりにされていた。