私のあこがれであり、目標の『織絵ルーナ』のDVD。


織絵ルーナは、全国区で人気のあるバーチャルアイドル。
自作でカリス姫の動画をアップしている私にとっては、雲の上の存在。
もちろん、クオリティーは天と地ほど違うが。


映像が開始されるまでのほんのわずかな時間を見計らい、私は口いっぱいに菓子パンを詰め込み、ミルクティーで流し込んだ。


パソコンの画面には制作会社のロゴが映し出される。暗転をまたいで、爆音を伴った爆発のスモークの中から織絵ルーナが。背負っているのは、紫色のレーザー光線。


腰まで垂らしたエメラルドグリーンの巻き毛が、純白総レースのドレスによく映える。


現実ではありえない細い手足を惜しみなくさらす。それでも未成年者の夢を壊さないよう、ギリギリ丈のスカートから下着なんて見えない。どんなに激しく踊っても。


私はルーナの流れるような動きとアングルに、釘付けだ。


動画サイトで無料で見れる映像とは、ひと味もふた味も違う。クオリティーも予算も……


だからこそ、この金欠で苦しい今、無理してもネット購入してしまったのだ。おばあちゃんからもらった隠し財産を、はたいて。


四季を表現する背景は、春の桜吹雪から始まり、無数の鳥が飛び立つのに合わせ、真っ青な海岸の景色へと変化した。白い砂浜とのコントラストもみごとだ。


その背景の変化に合わせ、水着に着替えているルーナ。


抜群のスタイルに不思議なほどいやらしさを感じさせないからだろうか。ルーナは意外にも女子のファンが多い。


砂浜で歌うルーナは太陽の光を全身に浴び、キラキラと輝いている。真っ白いルーナの肌が健康的な小麦色に色づく。


ルーナを回りをぐるりと一周するようにアングルが変化。動きの臨場感に、遊園地のコーヒーカップに乗った時のような感覚がして、軽いめまいを覚えた。



まばたきすることもできない私は、全身に鳥肌が立つ。


「サイコーーー」と思わず声を上げ、エクスタシーが最高潮に達した、次の瞬間。


バチッ。

えっ?