「でも、僕もずいぶんしつこく追いかけたんですよ。
そりゃあ、もう、あらゆる手を使って」


「とりあえず罠ははる。
それからとにかく徹底的に調べるよ。
どこから情報漏れたのか分からないから、ネットの仲間には頼めないし。
とにかく独りでやってみる」


「お願いです。
僕にも手伝わせてください。
このままじゃ……
僕、情けなさすぎて……」


決意がビシビシと伝わる。その声の方を見た。藍人くんが、真っ直ぐ私を見ている。私をじっと見る視線は痛いほどだ。今は、その気持ちに応えたい。


「うん、分かった
手伝って!

じゃあね、お願いがあるんだけど、まずね。
大川さんの結婚式から帰って来たのを、なんで知られたのか調べて欲しいの」


私のお願いに、藍人くんはばつが悪そうに下を向き、モゾモゾと口を動かした。

「それは……えっとー
心当たりがあるっていうか……
あのー」


「えっ⁈
まさか、情報ソースは藍人くんなの?」


非難するような口調だったのだろう。藍人くんは必死で頭を振り否定しながら、説明した。


「いえ、それではないんです。
ただ、あの日、僕があそこにいたのは全くの偶然ではなくって。
実は、カリス姫があの結婚式場に行くってツイート見つけて、そしたら姉が職場の関係であそこの葬儀に出るって言うから、僕なんの関係も無いけどついてったんです。もしかして会えるかなって思って。
本当にそれが、莉栖花さんかどうかは半信半疑だったんですけど……
結局、途中でいなくなったもんだから、姉には大目玉食らっちゃって」


「ツイート⁈
一体、誰の⁈」


藍人くんはポケットからスマホを取りだした。その画面のハンドルネームに謎は解ける。ニコニコとした人懐っこい丸顔が、無邪気に『僕だよ』とほほ笑みかけた。


「だめだよ、こんなこと書いたらー。
石井さーん」


ハンドルネームは『石井 勝也』


『明日はカリス姫と仕事
玉野川メモリアルホールに行きまーす』

というツイートになんの悪意も感じない。
そう、悪気どころか、なんの意味もないのだろう。次の日、式場の行き帰りをご丁寧に報告しているツイートだって、あくまでつぶやき、独り言だったはずだ。こんなトラブルが、絡んでいなければ。

石井さんを責めることも、できまい。逆の立場だったら、私だってこれくらい書いていた。本名とか、個人情報流したわけでもないのだから。


ただ、はっきりしたことが一つある。私自身が情報を流さなくても、どこからでも情報は漏れる。情報のソースはいたるところにあるのだ。


私は、新たに決意を固めた。


やはり、元になった人物を特定しなければ。